2012年12月30日日曜日

海外展開は儲からない?(映画編)

大友啓史監督のインタビューが多くの映画監督の意見を代弁しているので、ちょっと考察。

「るろうに剣心」にモスクワが熱狂 映像と観客一体

「それだけたくさんお金と時間かけてれば、そりゃすごいものできるよね」と言いたくもなります。別に皮肉や嫉妬ではなくて。もちろんすぐれたノウハウなんかも物凄く沢山あって、僕も色々なことを学びました。(本文より)

単純に「そのぐらいお金使えるんだったら、同じ金額使わせてもらえればね、僕だって もっと面白いもの作れるかもしれないよ」というような感触ですかね。いえいえ、決して傲慢な気持からではなく。逆にいえば、あちらは70億、こちらはそれ より10分の1以下で日常的にやっているわけですから。(本文より)

単純に掛けるコストに対してのリターンの問題だったりする。日本の場合は2〜20億で作って10〜50億くらいのビジネス規模(裏取りしてないので感覚です)作り手側からすれば制作費は多ければ多いのは当然ですが、現状のやり方でも国内でもそれなりにビジネスとしては成立している。それと10倍の制作費は当然ながら10倍のリスクを背負ってます。

だからこそ海外でとなる訳ですが、ハリウッドすら基本は国内売り上げで回収しています。海外配給はやはり保険的要素が大きい。日本の場合は出て行くに見合うコストを回収できる可能性が限りなく低いという点。少なくともアメリカ以外の国で大ヒットしてもそれが予算に反映できるほど利益をもたらすかは非常に疑問。

モスクワで上映されないっていうのは、構造的に考えると、モスクワの配給会社まで日本の配給会社がビジネスとして届いていないというだけですから。ちゃんとそこでセールスができて、長年人間関係を作っていれば、(モスクワでも)しっかり 上映されるはずなんですよ。根回しもして、現地の配給会社に食いこんで、プロモーションや宣伝もしっかりして。いわば日本の優れた総合商社みたいにね。日 本の映画の良さを、しっかりセールストークで売り込んで。その可能性に投資できるかどうかだと思います。
(本文より)

日本の圧倒的な円高と人件費を考えて海外に出張って営業かけて売って回収できるのか?むしろそのコストを国内の宣伝コストにかけた方がよっぽど儲かる。それなりの¥を使ってルーブルを回収する。ビジネスとしてこれはかなりリスクがある。

ハリウッドの場合は多くの場合、向こうから買いに来ています。J-Festで話題になって大盛況だからと言って確実にヒットするかどうかは疑問です。
そもそもフィルムフェステバルで現地のプロモーターが買いに来ていないという厳然たる事実を忘れてる。それぞれの国のプロが儲かると思えば勝手に買いに来ますよ。少なくとも当地で上映してるんですから。話しがあっても受け入れ態勢が出来てないって場合もあるけど、ほとんどの場合はコストが見合わない。別に安く買いたたかれている訳ではなくてそれが相場だったりもする。つまり制作者が思っているほどに海外に売っても儲からないんです。というより日本という市場は外から見れば充分に美味しい。

ましてやニーズに合わせたものを作るなんて本末転倒。ハリウッドの場合は内容的にも移民が多く国内向けと国外向けにそれほど際立った考慮をする必要がないと言うこともある。だが日本で海外を視野に入れたものを作る必要あると思いますか?そしてそんな事を刷れば一番大事な国内市場で売れない可能性ある。

ビジネスのルートをちゃんと作るための予算配置とか人材配置とかね、そういうのを、国に実務的な側面できっちり手助けしていただけないかなあと思いますね。文化交流とかそういう側面のみならず、ビジネスに直結させる方法、考えてくれませんか、考えませんかって。(本文より)

で、その海外進出コストを国が出せってなるけど、はなはだ疑問です。現状のJ-Festとかで充分。それ以上のサポートを国がやるとなると個別の作品単位になってくると選出方法も不透明になるしコストも膨大。やるとすれば法的規制の管理やアドバイスをするような機関があれば一番いいと思う。それ以外はある程度市場に任せた方がいいのでは。ビジネスになる方法は絶対官僚主導ではうまく行かない。外に出るしかない韓国と比べてもしょうがないし、エンタメの世界では韓国だって対日本以外ではそんなに成功していない。カンナムスタイルは例外的にヒットしていますが。

日本が世界的には単独で巨大な市場を持っているという事は厳然たる事実。少子化やら何やらで消費が冷え込み市場が縮小しているが、それでも圧倒的にでかい。外に出て行くリスクに対して回収できるリターンがかなり望み薄。

それは作り手側のスタンスとか、その後どう売っていくかという戦略のね・・・日本側の配給会社も含めて、国策も含めてですね、うーん、ないんだと思いますね、まだまだそういう習慣が。(本文より)

単純に必要ないというか必要なかった。今はいいけどこれから大変だって話になる訳ですが...
これからは大変だって、もうずーっと言っていて、もしかしたら実際ゆっくりと大変になっているのかもしれない。でも個人的には何とかなるんじゃないのとも思ってる。それは圧倒的なクリエィテブ能力があるからです。個別に比べれば色々あるけど総量としての制作能力は質量共に米国の次は間違いなく日本。

日本でそこそこ成功すれば当然海外でってなるけれどそれはかなりの部分で名誉欲な場合が多い訳でビジネスとしてはかなり多くの部分でコストが見合わない。現場の声として日本での制作コストが膨らんで来て日本の市場では回収がほぼ無理となり海外市場を制作の段階から意識しないと無理とならないと配給会社は本気にはならない。今んとこはあくまで余録。まずはいいものつくって日本で売って、儲かったら海外も行っとく?みたいな感覚が現状ですから。

私としては個人レベルで少しづつ海外へのパイプをつなげて行こうとは思っています。そういう純粋なクリエーターの思いで作った目一杯日本向け用コンテンツを海外に紹介したりビジネス化するような仕事をこれからもしていきたいと改めて思った2012年の年の暮れ...





実はこの作品には友人が参加しており、大友監督とも一度お会いしております。次に会う事があればじっくり話してみたい。
以前のブログ:

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